今週(6/15〜6/21)は「これは怒っていい」と思うニュースが1本。6月18日、Googleが予告通りGemini CLIを廃止しました。105,000スターを超えるOSSプロジェクトをコミュニティごと切り捨てた今回の件は、オープンソースの信頼という観点でも問題提起になっています。一方でAppleはWWDC 2026でSafari 27 betaを発表、Web開発者にとって使い物になる新機能が揃ってきました。
Gemini CLI 6/18廃止完了 — 6,000人のコントリビューターを吸収してクローズドソースへ
6月18日にGemini CLIが廃止されました。CI/CDパイプラインに組み込んでいた開発者は、この日を境に gemini コマンドが動かなくなっています。
出典: TechTimes — Gemini CLI Shutdown Takes Effect / Digital Applied — Gemini CLI to Antigravity Migration Guide
今回の件が特に問題視されているのは廃止の手順ではなく、その経緯です。Googleは105,000スターを持つオープンソースのGemini CLIに、1年近くにわたって6,000件以上の外部プルリクエストをマージしてもらいました。そして十分に育ったタイミングで、ツールを非公開の Go バイナリ「Antigravity CLI」に置き換え、外部貢献者を締め出したという構図です。
さらに無料ティアのリクエスト数が1,000回/日から約20回/日に激減。コミュニティへの返し方として批判が集中しています。

移行時に注意が必要な Breaking Changes が4点あります。デフォルトモデル名・ストリーミング形式・状態ディレクトリのパス・終了コード、すべてがGemini CLIと互換性がありません。gemini を antigravity に単純リネームしただけでは動かないため、CI/CDスクリプトの動作確認が必須です。
OSSをホスティングしてコミュニティを育て、成熟したところでクローズドに切り替えるパターンに、改めて警戒が必要だと感じます。今後AIツールを導入するときは「このプロダクトのOSS継続性はどう担保されているか」を確認する習慣をつけておく価値があります。Antigravity CLIへの移行自体は今すぐ完了させておいてください。
💡 今すぐ試せる: antigravity --version で動作確認後、CI/CDスクリプトで gemini を呼んでいる箇所を antigravity に置き換え。ストリーミング形式・終了コードの差異は必ず確認する
WWDC 2026 / Safari 27 beta — CSS Masonry・Customizable Select、Web開発者向け58の新機能
Apple が WWDC 2026(6/8〜12)で発表した Safari 27 beta の中に、Web制作者が喜ぶ更新がまとまって入っています。デベロッパーセッションの内容が今週広まっており、改めて整理します。
出典: WebKit Blog — News from WWDC26: WebKit in Safari 27 beta
Web開発者への影響が大きいものを抜粋します。
CSS Grid Lanes(マソンリーレイアウト) — Pinterest や画像ギャラリーでよく使うタイル状レイアウトが、display: grid に masonry-auto-flow を組み合わせるだけでネイティブに実現できます。これまで JavaScript のライブラリ(Masonry.js等)が必要だったレイアウトがCSSのみに置き換わります。
Customizable Select(後述) — Safari 27 beta でも appearance: base-select が実装され、Chrome に続いてブラウザサポートが広がりました。
Transform-aware Anchor Positioning — CSS Anchor Positioning で、transform が適用された親要素の内側でも正しくアンカー計算できるようになります。複雑なアニメーション+ツールチップの組み合わせが安定します。
Scroll anchoring — コンテンツが上に挿入されたときに画面がジャンプしなくなる機能。SNSのタイムラインや無限スクロールの実装に直結します。
今回のSafari 27 betaは 58の新機能 + 1,100以上のバグ修正を含む大型アップデート。CI/CDや日常実装に直結する機能を中心に選びましたが、他にもWebAssembly JSPI(Wasm↔async JSの連携)など注目の追加があります。
「Safariが対応していないから使えない」という判断を見直すタイミングが増えてきました。CSS Grid Lanes・Anchor Positioning・Customizable Select、いずれも今年中に全主要ブラウザに揃う可能性が高い。新規プロジェクトのポリシーを更新しておく価値があります。
💡 今すぐ試せる: Safari Technology Preview を入れて CSS Grid Lanes(masonry-auto-flow)を試してみる。Chromeと並べて挙動を比較しておくと実装時に迷わない
Claude Fable 5 登場(6/9)— コーディングベンチマーク90%超、Claude Code の最強モデルへ
6月9日、AnthropicがClaude Fable 5をリリースしました。同日GitHubがCopilot内での採用を発表し、AIコーディングツールのモデル構成が一斉に動いた日でもあります。先週のリリースですが、開発現場での採用が本格化している今週改めて取り上げます。
出典: Anthropic — Introducing Claude Fable 5 / Simon Willison — Initial impressions of Claude Fable 5
Fable 5 はAnthropic初の「コアベンチマーク90%超え」モデル。Claude Code での長時間エージェント作業や大規模コードベースのマイグレーションが主な用途です。
Web 制作者にとって具体的に変わる点は2つ。まずスクリーンショット → 実装コードへの変換精度が上がりました。デザインカンプの画像を渡して「このUIを実装して」という指示の再現度が向上しています。次に複数ファイルにまたがるリファクタリング。コンテキストが大きくても筋が通った変更を提案し続けられるようになりました。
価格は入力 $10/M トークン・出力 $50/M トークン。Claude Code のサブスクプランを使っている方は料金体系に変更なし。API直叩きの場合、1万トークン入力で約0.01ドルと、重い作業を投げ込む分には許容範囲です。Mythos Preview(旧最上位)の半額以下で同等以上の性能を実現しています。
Fable 5 で「AIに大きめの作業を投げる際のストレスが減った」という印象が開発者コミュニティで広がっています。Claude Code・Cursor・OpenCode を使っている方は、バックエンドモデルがFable 5に切り替わっているかを確認してみてください。切り替わっていない場合は設定から指定できます。
💡 今すぐ試せる: Claude Code で claude --model claude-fable-5 を指定し、既存プロジェクトのリファクタリングタスクを投げて精度を体感する
CSS Customizable Select — appearance: base-select で <select> がついにCSSだけでスタイリングできる
<select> 要素のスタイリングは長年の「CSSで一番苦労する要素」でした。OS依存のUIになってしまい、デザインに合わせるには JavaScript で別コンポーネントを作るしかありませんでした。appearance: base-select でその問題が解決します。
出典: Chrome for Developers — The <select> element can now be customized with CSS / MDN — Customizable select elements
/* これだけでCSSカスタマイズが有効になる */
select {
appearance: base-select;
background: #1e293b;
border: 1px solid #334155;
border-radius: 8px;
color: #e2e8f0;
padding: 0.65rem 1rem;
}
/* ドロップダウンリストのスタイル */
select::picker(select) {
background: #1e293b;
border-radius: 8px;
box-shadow: 0 10px 30px rgba(0,0,0,0.4);
}
option:hover, option:checked {
background: #6366f1;
color: #fff;
}
現在の対応状況はChrome 135+ と Opera 120+ が安定版サポート済み。今週発表のSafari 27 betaでも実装が入り、Firefox Nightly ではフラグ付きで動作します。プログレッシブエンハンスメントとして今すぐ使い始められます(非対応ブラウザではデフォルトのselect表示になる)。
See the Pen CSS Customizable Select デモ — appearance: base-select でJSゼロのドロップダウン by BaseKENT (@basekent) on CodePen.
<select> のスタイリングのために Headless UI や Radix UI を入れていた部分が、CSSだけに置き換わります。アクセシビリティ(キーボード操作・スクリーンリーダー対応)もブラウザが維持してくれるため、JSで再実装したものより信頼性が高い。Chrome で動く新規フォームにはまず試してみてください。
💡 今すぐ試せる: 既存フォームの <select> に appearance: base-select を1行追加して Chrome 135+ で表示確認。デザインに合ったスタイルをCSSだけで書いてみる
今週のひとこと
今週を一言で表すなら「OSSの信頼性を問い直す週」でした。Gemini CLIの件は個別のツール問題にとどまらず、「企業がOSSコミュニティと関わるときのルール」の議論を呼んでいます。Safari 27 betaとCSS Customizable Selectは対照的に明るいニュースで、Webプラットフォームが確実に前進していることを感じます。来週(6/23〜25)はFigma Config 2026なので、そちらのレポートもお届けする予定です。



