「靴磨きにはこだわるのに、シューツリーは入れていない」 もしそうだとしたら、それは上質なオーダーメイドのスーツを、細い針金ハンガーに掛けているのと同じくらい勿体ないことです。
一日中あなたの体重を支え、アスファルトの上を歩き回った革靴は、コップ一杯分の汗を吸い込み、ソールは反り返り、甲には深い歩きジワが刻まれています。 そのまま放置すれば、シワから革がひび割れ、二度と元の美しいシルエットには戻りません。
シューツリー(シューキーパー)は、靴にとっての「ベッド」です。 帰宅後、温まった革が冷える前にツリーを入れる。すると、反り返っていたつま先がスッと伸び、深く刻まれたシワが内側からのテンションでパンッと張る。この瞬間の快感は、何度味わっても良いものです。
今回は、私が自身の靴のシルエットに合わせて使い分けている、機能美に溢れた名作シューツリーをご紹介します。
Sleipnir (スレイプニル) ヨーロピアンモデル シダーシューツリー
英国靴・イタリア靴の「シャープな骨格」を支える
ノーズが長く、全体的にスマートなシルエットを持つヨーロッパ製のドレスシューズには、それに合わせた細身のツリーが必要です。
スレイプニルの『ヨーロピアンモデル』は、甲からつま先にかけてのなだらかな傾斜が非常に美しく、靴の内部に吸い込まれるようにフィットします。 ツインチューブ(2本の金属パイプ)仕様のため、前後左右に均等なテンションがかかり、靴のフォルムを完璧に矯正してくれます。
無塗装のアロマティックシダー(芳香杉)が使われているため、靴に入れた瞬間に森のような清々しい香りが広がり、一日の湿気をしっかりと吸収してくれます。 靴にスッと押し込み、かかとのパーツが「カチッ」とはまる時の精緻な感触は、上質な工業製品を扱っているかのような心地よさがあります。
Woodlore (ウッドロア) エピック シューツリー
無骨なアメリカ靴に似合う、真鍮のアクセント
オールデンなどのアメリカ靴や、少し丸みを帯びたぽってりとしたシルエットの靴には、こちらのウッドロアが最適です。 ウッドロアは、アメリカの高級靴ブランド「アレン・エドモンズ」の子会社として設立されたブランドであり、その品質は折り紙付きです。
この『エピック』モデルの最大の魅力は、かかと部分に輝く「真鍮(ブラス)のノブ」にあります。 玄関に靴を脱ぎ、このツリーを入れたまま並べておくと、真鍮の鈍い光沢がアンティーク家具のような重厚感を醸し出します。見えない靴の内部だけでなく、靴箱全体の景観まで美しく引き上げてくれるのです。
甲の部分がしっかりと高く作られているため、深い履きジワも内側から力強く押し伸ばしてくれます。愛用のローファーや外羽根の革靴を「育てる」ための、頼もしい相棒です。
Collonil (コロニル) アロマティックシダー シュートゥリー
レザースニーカーの寿命も延ばす、万能のスタンダード
シューツリーは革靴だけのものではありません。 BASE KENTが以前おすすめしたような、大人のための上質なレザースニーカーも、ツリーを入れるか入れないかで数年後の顔つきが全く変わってきます。
コロニルのシューツリーは、比較的どんな靴の形状にも合いやすい汎用性の高さが特徴です。 シングルチューブで出し入れがしやすく、スニーカー特有の柔らかなアッパーも優しく伸ばしてくれます。
そして何より、シダーウッドの香りが極めて強いのが特徴です。 スニーカーは革靴以上に汗をかきやすいため、この強力な除湿・防臭効果は非常に理にかなっています。帰宅後、スニーカーの紐を少し緩めてこのツリーをセットする。そのひと手間が、カジュアルな足元に「大人の品格」を保ち続ける秘訣です。
靴を休ませることは、自分を休ませること
靴にシューツリーを入れる数秒間。 それは、今日一日自分を支えてくれた道具への感謝を示す時間であり、同時に、外の世界で戦ってきた自分自身のスイッチを「オフ」にするための儀式でもあります。
ツリーによってピシッと背筋を伸ばした靴たちが並ぶ玄関は、あなたの生活の純度を確実に上げてくれるはずです。
BASE KENTが提案する、モノを愛し、長く使い続けるための美学。 まずは大切な一足のために、極上のベッドを用意してあげませんか。

